円盤紀行

レコードに関わるいろんな人のお話

横断歩道を渡る男たち

「すー、やっぱすーよね!」
酒に酔ったミサが絡んでくる。
「だから〜、すーじゃなくて酢ねっ。酢。これはモルトヴィネガーね。」
「えっ、すーじゃないん?まっ、どっちでもええけど。」



私より1年遅れて入社したミサは同じ歳ということもありすぐに仲良しになり、もう2年と少し経つ。
酔うとまだ地元の言葉になり、びっくりすることもあるが今はだいぶ慣れてきた。
「すー」というのはそのミサと仕事帰りに寄ったアイリッシュパブで食べたフィッシュ&チップスの話だ。
お店で1パイントのビールを2杯づつ、今は私の部屋でおつまみもなく缶ビールを飲んでる。
私は2本目、ミサは3本目。
「あの店料理美味しかったよね。また行こうよ。」
「せやな〜、美味しかったな。けどイギリスの料理って美味しくないって言わへん?あれ誰が言ってんのやろか?」
「そうだよね。自分とこの国の食べ物を不味いとは言わないよね。あれじゃない、フランスとかイタリアとかドイツとかに比べってことなんじゃないかな?」
「そうかなぁ?まっ、どっちでもええけど。は〜っおやすみぃ」
3本目のビールを飲み干したミサはそのままソファーに寝てしまった。
休みの前の日にはよくある事である。
私はミサにタオルケットを掛けてあげた。
もうこうなったら朝まで起きない。


1年ほど前からレコードを聴きはじめた。
産まれてからそれまでレコードなど聞いたこともなかったが、最近はやっているという記事が何かの雑誌に書いてあったので興味本位で聞くことにしたのだ。
まだ30枚ほどしか持ってないが、休みの日にレコード屋さんに行くことは服やアクセサリーを見に(買いに)行くのと同じくらい楽しいものになっている。
ジャンルなんかわからないからとりあえずジャケットを見て気に入ったものを買うことが多い。
俗にいう「ジャケ買い」というやつだ。


せっかくなんで今日はイギリスのものを聞いてみようかな。
半年ほど前に買った男4人が横断歩道を渡っているジャケット。
どこがいいと思ったのかわからないが、その時このジャケットかっこいいなぁと思ったのだ。


レコード盤を取り出しターンテーブルに乗せる。
フルオートで赤いボディのレコードプレーヤー(値段と色で決めた)。
スイッチを入れると自動的にトーンアームが動きレコードの縁まで来るとゆっくりと降下。
プツッという音とともに始まるアコースティックギターそして優しい歌声。
あれっ?間違ってB面にしちゃった。
私も酔ってる?


The Beatles / Abbey Road

にほんブログ村 音楽ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 音楽ブログ 音楽のある暮らしへ
にほんブログ村