円盤紀行

レコードに関わるいろんな人のお話

黒いコートで髭もじゃの黒い人

こんな日でも音楽が聴きたくなるもんなんだなぁ…。


朝起きた時から何となくあった不安感。
何がどうとかではなく、ただ漠然と。
「仕事に行きたくないだけかも」と思ったがそれだけではないらしい。


駅までの道はいつも通り軽薄なカラフルさで溢れている。
透明人間の僕をすれ違う人たちがすり抜ける。
無機質な電車の中。
替わったばかりの週刊誌の広告にはどうでもいいような見出し。
降りる駅は次。
このままスルーしようと今まで何度思ったか。
まだ一度もやれてはいないが。
今日こそはと思ってみたが、叶うはずも無くいつも通り波に飲まれ改札へ。



すっかり暗くなった道を急いで帰る。
今日も昨日と同じ繰り返し。
多分明日も。


テレビでは知らない人たちが大声をあげ騒いでいる。
濃い味付けの惣菜が口の中で暴れ回り水分を奪っていく。
決まり事のようにシャワーを浴び、発泡酒をあける。
これも昨日と同じ、明後日とも同じ。



襟を立てた髭面のおじさんが遠くを見ている。
この表情がどんな感情を表しているのかはわからない。
ただ何となく無性に聴きたくなっただけ。
レコード盤をターンテーブルに乗せる。
スピンドルがラベルに当たらないように狙いを定めて。
33 1/3にスイッチを合わせる。
カートリッジを盤の縁まで持っていきゆっくりと降ろす。
かすかなパチパチの後に始まる男たちのガヤ(?)。
そこからの澄んだサックスの音色。
そして優しく憂く、時折力強い声。


Marvin Gaye / What's Going On

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